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開会式に臨んだ選手たち=2025年7月5日午前8時33分、上毛敷島、中沢絢乃撮影
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 第107回全国高校野球選手権群馬大会(朝日新聞社、群馬県高校野球連盟主催)が5日、開幕した。上毛新聞敷島球場(前橋市)で開会式と1回戦1試合があり、藤岡中央が大泉を8―1(7回コールド)で破った。藤岡中央の斉田が一回に大会第1号となる本塁打を放った。2回戦では第1シードの健大高崎と対戦する。6日は3球場で1回戦8試合が予定されている。

仲間との出会い「みんなで一緒に楽しく野球やろう」

 外国人が人口の約2割を占める群馬県大泉町。同町にある大泉の選手は、12人のうち3人が外国ルーツだ。そんな外国ルーツの選手たちも野球の魅力に引かれ、躍動した。

 大泉の三塁手の當銘ホアキン(3年)は同県桐生市生まれのペルー国籍。小学校入学前、ペルーに1年ほど住んでいたが、子どもの遊びといえば専らサッカーだった。大泉町の小学校に入学後も「将来はサッカー選手になりたかった」。公園で一人でドリブルをして遊んでいた。

 そんなとき、声を掛けてくれたのが、近くで練習する少年野球チームにいた川島千成(3年)だった。「一人でサッカーをやっているのだったら、みんなで一緒に楽しく野球をやってみない?」

 チームを作り、大勢で練習しているのが楽しそうに見えた。「小さいボールを捕って、細いバットで打つ。『ストライクゾーン』というものがあるのか。不思議だな、面白いな」。ペルーでは野球はマイナーで、ルールも知らなかったが、バットで球を打つ楽しさに引き込まれた。中学校に入り、仲良くなったブラジル国籍の井上海斗(3年)を野球部に誘った。

 サッカー大国ブラジル。井上も中学ではやはりサッカー部に入るつもりでいたが、未経験の野球部に。足の速さを生かして走り、フライを捕る瞬間などは達成感があり、楽しかった。

 3人は高校でチームメートになった。今年着任した木部誠監督(52)のもとで、キャッチボールやノックでの球の捕り方など基礎から徹底的に練習して、最後の夏を迎えた。

 大泉は初回に犠飛で先取点を挙げるが、その裏にソロ本塁打を浴び同点に。二回には井上が二盗を決め、三回には當銘が左安打を放ち好機を作るが、なかなかあと1本が出ない。それでも、いい守備が出ると「ナイス!」とチームで声を掛け、励まし合った。

 6点を追う七回裏1死一、二塁。あと1点取られたら試合が終わる――。「一つひとつ、とにかく止めるんだ」。三塁手の當銘は三塁方向への鋭いゴロを好捕して相手打者をアウトに。だが、次の二、三塁から7番打者に中前へ適時打を浴び、コールド負け。中堅手の井上は「高校野球が終わってしまったんだ……」と涙があふれた。

 試合後、井上は「この仲間で野球を続けてこられて、最後まで楽しかった。野球を通して成長した姿を見せられたはず」と目を赤くしながら話した。當銘は「野球は仲間との助け合いのスポーツ。結果的には負けてしまったけど、チームプレーで最後の試合を全力で楽しめた。野球に出会って、今まで続けてきてよかった」と語った。

開会式「一丸となって熱い夏に」

 開会式では、66校59チームの選手たち全員を、明和県央野球部3年の藤井柊瑛(しゅうえい)さんが先導し、東農大二高吹奏楽部の演奏とともに入場行進した。昨夏優勝の健大高崎が先頭を歩き、加藤大成主将が優勝旗を返還した。

 県高野連の上原清司会長は「みなさんは確かな成長を手にしました。仲間を信じ、これまでの努力を信じて、最後まで戦い抜いてください。健闘を祈ります」とあいさつ。少年野球に励む常木朝陽(あさひ)さん=桐生市立新里中央小6年=は「僕たちの目標である選手のみなさん、チームメートを信じ、自分を信じ、一丸となって悔いのない、熱い夏にしてください」と応援メッセージを送った。

 高崎経済大付高3年の吉沢夏葉子さんが国歌を、前橋高2年の萩原基心さんが大会歌を独唱。堂々とした歌声が、球場に響いた。

 開幕試合に先立ち、女子中学生野球チーム「群馬エンジェルス」の高木愛莉投手(前橋市立第一中3年)と関根心夢(みむ)捕手(同市立荒砥中3年)のバッテリーが始球式を務めた。高木さんと関根さんは「(3年生にとっては)最後の夏だから、本当に頑張ってほしいと思って始球式に臨みました」と話した。

選手宣誓「高校野球を未来につなげる架け橋に」

 選手宣誓を務めたのは渋川の田中慶幸主将(3年)。「あこがれてきた甲子園をめざしてこの敷島の地に立ち、大会を迎えることができました。感激をかみしめ進取果敢にプレーし、高校野球を輝かしい未来につなげる架け橋となります」と宣誓。大きな拍手に包まれた。

 6月13日の組み合わせ抽選会で宣誓を務めることが決まり、「指導者や保護者への感謝の気持ち、野球への強い思いを語りたい」と思っていた。前夜は緊張で眠れず、夢の中でも選手宣誓を唱えていたという。大役を終えて「小さな頃から憧れていた選手宣誓ができて光栄でした。試合はこれから。一戦必勝で頑張りたい」と話した。

育成功労賞表彰式「熱意ある限り、高校野球は発展」

 開会式に先立って育成功労賞の表彰があり、篠原雅之さん(65)に贈られた。篠原さんは富岡で外野手として活躍し、立教大学野球部へ。1984年から高校教諭として長年、野球部指導にあたった。93年に前橋西監督として夏の群馬大会ベスト8。00年秋に吉井監督として県大会準優勝し、関東大会に出場した。高崎工の教頭、副校長も歴任。県高野連理事として大会運営にも携わった。

 篠原さんは「指導者の先生方が日々努力と工夫を重ねて生徒の可能性を引き出してきた。時代が変わっても先生方の熱意が変わらない限り、高校野球は形を変えながらも発展していくと信じています」とあいさつした。

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