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施設の老朽化で教室の移転を迫られている多文化フリースクールちば。今年度以降の運営は不透明だ=2023年11月9日午後2時45分、千葉市中央区
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 公的制度にはない義務教育年齢を超えた外国人の子どもの日本語教育について、千葉県は活動中のNPO法人を支援する制度を今年度から始める。一方、長年にわたって外国人の子どもの学びを支援しているNPO法人は存続の危機が続く。何が原因なのか――。(重政紀元)

 県は2024年度予算で「外国籍の子供の日本語学習等支援事業」として、高校進学に必要な日本語を教えるNPO法人などの教室運営費の一部を補助する。予算額は500万円で、1団体の上限は300万円。

 親の都合で来日する子どもの増加が背景にある。15歳未満は地域の公立高校が受け入れを義務づけられているが、現地の中学を卒業して来日すると義務教育年齢を超えるため、日本語教育を含めて高校進学を支える公的な制度はない。

 こうした子どもたちの「学び直し」の役目を果たす公立夜間中学は県内に3校ある。年度途中からの入学は難しく、専門家は「憲法の教育を受ける権利が保証されていない」と指摘する。

 対応してきたのが民間団体だ。千葉市のNPO法人「多文化フリースクールちば」は14年の設立後、アフガニスタンや中国など26カ国の約250人が通い、帰国者などを除いた約8割を高校に送り出した。

 授業は平日の午前と午後で、公立夜間中とダブルスクールをする子どもも多い。県国際課の担当者は「新年度の事業の対象になりそうなのは3団体。多文化フリースクールちばの在籍者は圧倒的に多い」と話す。

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 多文化フリースクールちばの主な財源は授業料と民間団体の寄付だ。県の支援制度を活用すると財政は安定するが、2024年度の運営は不透明になっている。

 原因は千葉市から迫られている移転だ。教室を置く千葉中央コミュニティセンターでは、活動の公共性が高いとしてフロアの一角を無償で使っている。センターは老朽化による改修工事が決まり、24年度内の移転を求められている。

 24年度の入学者は26人。年度途中に来日する入学者を含め、40~50人になる見込みだ。学習能力の差が大きく、細かい教室分けが不可欠になっている。

 民間施設を借りると、少なくとも年間400万円の家賃がかかる。県内の最低時給と同じ程度に抑えている26人の講師の報酬は、交通費を合わせて約800万円になる。

 子どもたちは家計が厳しい世帯が多い。授業料収入の見通しは約550万円。県の新たな制度を利用しても、300万円以上足りない。23年度は民間から約600万円の助成を受けたが、今後も続くか見通しはたっていない。

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 日本語教育の教室を無償貸与してきた千葉市は2024年度から、各団体への助成を年間10万円から20万円に増やす。

 多文化フリースクールちばには、アフガニスタンコミュニティーがある四街道市や佐倉市から通う子どもが多い。23年度の生徒43人のほぼ半分を占めるが、各自治体の支援はない。教室がある千葉市在住者は毎年3割程度にとどまる。

 県は「県全体の問題として新事業を予算化した。あとは市町村の判断」。千葉市は「フリースクールの教室がある千葉市以外から通う子どもが多い。状況をみながら、25年度以降の支援を検討する」としている。

 多文化フリースクールちばによると、日本の在留制度は高校を卒業していない外国籍の子どものビザ取得が制限され、就労も限られる。白谷秀一代表は「制度で支えられないから私たちが活動している。今後も外国籍の子どもは増える。支援が続くように公的負担をしてほしい」と話す。

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