滋賀短大付の主軸を努める大窪玲輝捕手=2025年2月13日、大津市、坂上武司撮影

 「保木(淳)先生に『捕手をやってくれないか』と言われた時は驚きました」

 滋賀短大付の大窪玲輝(れいあ)選手(3年)はそう振り返る。入学して間もない頃のことだという。大窪選手の学年には捕手が一人もいなかったことから、白羽の矢が立ったのだ。

 現在は女子野球部の監督を務める佐藤彰哉さん(30)が1年生担当コーチをしていた時に大窪選手に手取り足取りの指導をした。佐藤さんは現役時代、捕手だった。「最初はブロッキングから教えましたね。なかなか出来なくて本人はつらかったかもしれませんね」と話す。

 「めちゃくちゃ嫌でした」と大窪選手。だが、保木監督からすると、捕球からスローイングまでの持ちかえが速く、その肩に期待するところが大きかった。打撃については申し分なく、チームの柱として据えたかった。

 佐藤さんは大窪選手にブロッキング、キャッチング、スローイング、そして配球と「捕手としての4大要素」を熱心に教え続けた。もともとの身体能力の高さから、みるみる上達。今では替えの効かない捕手になった。

 エース左腕の桜本拓夢(ひろむ)投手(3年)は「配球についてはすべて玲輝に任せています」と話す。制球力で打たせて取るタイプの桜本投手からすると、配球は生命線。それを大窪選手に全面的に委ねている。

 大窪選手に配球のコツを尋ねてみると、それは失敗の積み重ねで得たものだという。練習試合で打たれたり、抑えたり、と繰り返す中で自分の感覚を研ぎ澄ませていった。

 「配球には『表と裏』があると佐藤先生に教えていただきました。例えば、初回に変化球で入ったら、相手は変化球を意識する。逆に直球で入ったら直球を意識する。表の軸となる球を決めて、裏にどう球を投げさせるか、というイメージです。もちろん相手のバッティングを見ながら何を狙っているのかも考えます。自分が迷っていたらダメです。今までの練習と自分の勘を信じてサインを決めます」。大窪選手は秘訣(ひけつ)を教えてくれた。

 打線では4番に座る。「チャンスに回ってくることが多いので、走者をかえすのが自分の仕事だと思っています。捕手をやることによって、相手がどんな配球をしてくるか想像しやすくなったと思います」。捕手を経験することが打撃の向上にもつながったと思っている。

 「玲輝」という名前は、「一番先頭に立って輝くという意味で付けたと親から教えられました」という。攻守の要として滋賀短大付を引っ張る大窪選手の活躍次第で、甲子園での戦いぶりは変わってくる。甲子園では、チームで1番明るく、食いしん坊な大窪選手に注目だ。

共有
Exit mobile version