イスラム教徒が過半を占める多民族国家マレーシアで、ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャへの差別的な言動が問題になっている。政情不安や迫害から逃れてきた人々の流入が急増したことで、マレーシア社会で反発が起きたとみられる。
マレーシア(難民条約に未加盟)の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)には、5月時点で約20万人が難民・亡命希望者として登録されている。そのうち約18万人がミャンマー出身者。ロヒンギャはこの15年ほどで5倍以上に増え、約12万人を占める。
ロヒンギャは仏教徒の多いミャンマーで「不法移民」として長年迫害されてきた。2017年にミャンマー国軍がロヒンギャ武装組織の「掃討作戦」を実施すると、多くの人が殺害され、70万人以上が隣国バングラデシュに避難。安全や就労機会を求めて、経済が比較的堅調でイスラム教徒が多いマレーシアへ逃れるロヒンギャが急増した。
移動が制限されたコロナ禍のさなかにロヒンギャの密航船が漂着するなどし、マレーシア国民の不安は高まり、風当たりはさらに強まった。2021年、国軍のクーデター後の軍の弾圧や内戦も、ミャンマーからの移民流入に拍車をかけた。
「働き、貢献しているはずなのに」
マレーシアはマレー系や中華…