闇の表現のバリエーション、カラフル趣味への逆張り。東京・板橋区立美術館の「エド・イン・ブラック」展は、江戸絵画の「黒」に焦点をあてるユニークな試みだ。
黒といえば、まずは夜。極端に細長くトリミングされた画面が印象的な長沢芦雪(ろせつ)「月竹図」では、淡墨の塗り残しで描かれた月が、竹のシルエットを浮かび上がらせている。こうした月やかすみなどの記号が伝統的に担ってきた夜闇の表現は、江戸時代に灯火用の油が普及したことで、様々に展開していく。
たとえば、与謝蕪村の「闇夜漁舟図」。小舟上のかがり火の煙が光を拡散し、樹木の一部を照らし出す。光が反射した水面と樹下の闇、民家から漏れる明かりが、細かな墨の階調によって描き分けられている。
鈴木其一(きいつ)「暁桜夜…