夜、家に親がいられない家庭があります。そうした家庭の子どもと親を支えてきた夜間保育園を舞台にした小説『蒼天(そうてん)のほし』(双葉社)が5月、出版されました。著者は、保育取材を長年続けてきた小説家のいとうみくさん(55)。夜間保育園を通じて見えた親子の姿、日本社会とは? 話を聞きました。
- 言論サイトRe:Ronはこちら
「蒼天のほし」著者 いとうみくさんインタビュー
――22歳の保育士、風汰を主人公に、東京・新宿の「すずめ夜間保育園」の日々を描きました。なぜ夜間保育園を取り上げようと?
長年、ライターとして保育雑誌に記事を書いてきたこともあり、夜間保育園の存在は知っていました。ある時、きちんと知ろうと思って調べたところ、私の中にあった誤解に気付きました。
ずっと、「夜だけやっている保育園」だと思っていたんです。実際は日中から子どもを受け入れて、夜間も、という園が多かったんですね。朝まで過ごす子もいますが、午後9時、10時に保護者が迎えに来るケースも多いことも知りました。官僚や医療従事者、マスコミ関係者など、親の職業も想像以上に多様でした。
まだまだ知らない面がある、一度きちんと書いてみたい――。そう思い、東京と福岡の二つの夜間保育園を取材して書きました。
夜間保育園
1981年、ベビーホテルで起きた死亡事故を機に制度化された。こども家庭庁の「延長保育等実施状況調査」(2024年度)によると、24年4月1日時点で、認可の夜間保育園は全国に74園。開所時間は午前11時~午後10時で、前後に延長保育があることもある。このほか、認可外の保育施設が各地にある。
――夜間保育園には「偏見」が少なからずあります。「子どもは夜、家庭で過ごすべきだ」「夜、子どもを預けるなんて虐待だ」という声も聞きます。
現実として、必要としている人がいます。
小説では、広告会社勤務の父…