大相撲夏場所で2場所連続優勝を飾り、横綱昇進を確実にした大の里関。昇進が決まれば史上最速となる所要13場所でのスピード出世が、後援会にうれしくも複雑な悩みをもたらしている。
「横綱昇進はうれしいが、こんなに早いとは。もう、贈った化粧まわしは着けてもらえない。寂しい」と頭を抱えるのは、「大の里藤崎町後援会」事務局長の栩内(とちない)伸治さん(51)だ。
大の里関のしこ名は、大正から昭和初期にかけて活躍して「相撲の神様」ともたたえられた「大関・大ノ里」(1892~1938)に由来する。大ノ里の出身地である青森県藤崎町では、昨夏に大の里関が巡業の合間に訪れて大ノ里の親族と面会するなどした縁もあり、昨年11月に大の里関に化粧まわしを贈呈したばかりだった。
化粧まわしは力士が土俵入りの時に身につける華やかなまわし。藤崎町はリンゴの代表的な品種「ふじ」が生まれた産地なので、白地にまっ赤なリンゴが映えるデザインのまわしに。200万円を超える資金は町の有志や企業から募った。
だが、横綱になると土俵入りで太刀持ちと露払いを従えるため、化粧まわしは3枚で一つのデザインの「三つぞろい」になる。例えば、大の里関の師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)は、現役時代は、漫画「北斗の拳」の「北斗3兄弟」をあしらった。
そのため、「1枚もの」でデザインされたこれまでの化粧まわしは「お蔵入り」となる。費用もこれまで以上にかかる。栩内さんは業者から「最低500万円」と聞いている。
藤崎町が贈呈したリンゴ柄の化粧まわしは、栩内さんによれば「数回は着けてもらえた」という。
大ノ里を生んだ藤崎町では少年相撲大会が開かれるなど、相撲への関心は高いが、人口は約1万4千人(2020年)と決して多くはない。栩内さんは「小さな町だから新たな化粧まわし贈呈は厳しい」としつつも、「大の里関の活躍次第で、もう1回贈ろうという声が後援会から出れば、みなさんに協力をお願いすることになるかもしれない」と話している。