6月から再開するCCPに向けて話し合う静岡市里親会の水元雅弘会長(手前右)ら=2025年4月28日、静岡市葵区

現場へ!  巣立ちを支える(3)

 「参加した子どもたちが、ここで出会った人たちと、つながっていけばいいなぁ」。静岡市里親会長の水元雅弘さん(65)が期待の声をあげた。

 静岡市児童相談所内の会議室で4月末、「未来について考えてみよう」と題したキャリア・カウンセリング・プロジェクト(CCP)の打ち合わせがあった。里親会のほか、認定NPO法人静岡市里親家庭支援センターのスタッフや常葉大学短期大学部の森岡真樹講師(44)らが参加した。

 CCPは、生い立ちに困難を抱え社会的養護下で暮らす子どもの自立支援の取り組みとして、静岡大准教授(現・北海道大准教授)だった井出智博さん(49)らが2013年に開発し、静岡県内の児童養護施設などで始めた。

「肯定的な将来」を描けない

 「子どもの未来を育む自立支援」の編著者でもある井出さんは、社会的養護の子どもたちは肯定的な将来展望を描けないことが多く、中高生ぐらいになっても将来を考えたいという気持ちが低いと指摘。「ケアを離れた後がとにかく大変だから、知識とスキルを身につけさせようとするだけではなく、ケアを離れる前に、楽しさや喜びを感じながら、どう生きていきたいかを一緒に考える『心の準備』をしたほうがいい」

 CCPは、職業や進路にとどまらず、大人になった自分を思い描く体験を、カウンセリングの手法を活用して提供する取り組みだ。大人になる厳しさだけでなく、子どもたちが主体的に将来を描く楽しさや喜びも体験できるよう工夫されている。

 19年に市里親会、里親家庭支援センターとも一度実施したが、コロナ禍と井出さんが静岡大から北海道大に移ったこともあり、里親会・同センターとの取り組みは立ち消えになっていた。

 再開する今度のCCPでは、里親家庭で育って社会に出た先輩の話を聞くほか、身近な大人の生活を観察したり、自由に「人生設計」したりする。市内の里親家庭で暮らす中学3年から高校3年の男女6人が参加する予定だ。6~12月に月1回夕方に1時間ほど、計7回開く。

 先輩として参加する女性(22)は、乳児院から児童養護施設へ。週末だけ家庭的養護を体験する週末里親を経て、里親家庭で育った。

 一時保護や週末里親などでいろんな子どもが里親家庭に来た。里親の「おばちゃん」の愛情を確かめるように甘えると「うちの子は○○ちゃんだけだよ」と抱きしめてくれた。「ごはんとおみそ汁さえつくれれば大丈夫」と幼いときから教えてもらった。

「焦らず、しっかり悩んでいい」

 高校受験はせず中高一貫にす…

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