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牧瀬稔・関東学院大教授(本人提供)

 学習指導要領の改訂で、2022年春から必修科目「公共」に再編された「現代社会」。その最後の出題となった今年1月の大学入学共通テストでは、第5問で「人口が減る中での地域社会のあり方」が取りあげられた。この分野に詳しい、関東学院大法学部地域創生学科の牧瀬稔教授に解説してもらった。

「移住でも観光でもない人々」 関東学院大・牧瀬稔教授

 第5問には四つの問いがあります。人口減少に直面する地方のX市で、地域づくりについて探究学習をする生徒のやりとりをもとに、さまざまな事例や世論調査のデータを読み込んで答えさせる良問だと感じました。

 問3では、「関係人口」と称される人たちが地域に及ぼす三つの効果について取りあげています。提示されたアからウの事例に、三つの効果があてはまるかどうか、注意深く読めば判断できます。

 「関係人口」という言葉をご存じでしょうか。

 共通テストの問題文でも簡単に触れていますが、総務省の「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」では、定義として「移住者=定住人口」でも「観光客=交流人口」でもない、「地域や地域の人々と多様に関わる者」とされています。

 地方が人口減少と高齢化で、地域づくりの担い手不足に直面するなか、住んではいないものの、その地域に関わり続けて変化を生み出す人たちです。いずれ移住し、定住者になる可能性も期待できます。「行き来する」「地域内にルーツがある」「過去の勤務や居住、滞在などの関わりがある者」などと例示されています。

 14年に民間研究機関が「2040年までに全国の半数の自治体で20~30代の女性が半減して消滅可能性都市になる」との試算をまとめた後、安倍政権は「50年後も人口1億人を保つ」と掲げて地方創生に力を入れました。

 19年末の「第2期地方創生」では「関係人口の創出・拡大」が中核として示され、多くの補助金が用意されたので、自治体が積極的に取り組むようになりました。多くは子育て世代を含む若い人たちに狙いを定めています。

 例えば、私がアドバイザーとして関わった愛媛県西条市は、17年から市をPRする「シティプロモーション」に力を入れ、翌年度に総務省のモデル事業に選ばれました。SNSやメールマガジンを活用して市外在住のファンクラブ会員を増やし、移住希望者へ情報提供をしたことで、定住促進につながり、将来の人口推計が改善しました。東京や大阪に担当者を配置してPRした効果もあったはずです。

注意が必要、負の側面も

 ただ、関係人口の負の側面には注意が必要です。

 私は「弊害人口」と呼んでい…

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