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大阪大学医学部保健学科を卒業した中村祐子さん=2019年3月、大阪府吹田市、本人提供

 異変を感じ始めたのは、2015年3月。大学2年次の期末試験を終え、石川県に帰省したその日だった。

 中村祐子さん(31)は、実家の2階の居間でほっと一息ついていた。腰の周りに痛みを感じ始め、次第に下半身がしびれる感覚が強まった。

 「荷物のせいで腰をひねっちゃったのかな」

 動かないようにして様子をみていたが、翌日になってもしびれはひかず、痛みも強まる一方だった。

 「ちょっと普通じゃないな」。両親もそう感じていた。急いで、近くの整形外科クリニックを受診した。

 診察した院長は「脊髄(せきずい)に何かあるのかもしれない。でもいま撮影したX線画像では詳しくわからない」と言い、総合病院で翌日にMRI(磁気共鳴断層撮影)検査を受けるよう紹介状を渡した。そして、こう続けた。「もし歩行障害が強くなったら紹介先の病院をすぐに受診してください」

 いったん実家に戻ったものの、焼けるような痛みが下半身に広がっていた。感覚が過敏になっているのか、何かが触れるとさらに強い痛みが走った。しびれで、歩くこともしんどくなってきた。「このままでは2階から下りることもできなくなるかも」と思うほどだった。

 尿意を感じてトイレでいきんでも、排尿できなかった。苦しさに耐えかね、午後10時過ぎ、紹介された病院を受診したい、と居間にいた両親に頼んだ。家を出る際、母親は「入院の準備もしていこうか」と言った。

 医療従事者に憧れ、大阪大学医学部保健学科で看護学を専攻して2年。一人暮らしを続けながら、大学では留学生らを支援する国際交流ボランティアグループに参加し、国境なき医師団や青年海外協力隊として紛争地や新興国で活躍できる看護師をめざしていた。

動かせなくなった脚、「かたまりが悪さ」

 3年次の授業開始まで、まだ…

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