文部科学省=東京都千代田区

 文部科学省が、大学病院の教育や研究の経費を支援する新事業を計画していることが分かった。

 物価や人件費の高騰で経営が悪化し、他の病院ができない高度医療の維持や、地域医療を支える人材の育成が難しくなるという危機感がある。

 来年度予算の概算要求に経費60億円を盛り込む。対象は、経営基盤の強化を図る、医学部を置く50の国公私立大を想定。病床数や人員などの適正化や教育研究の強化などに取り組む病院を選び、診療報酬で補塡(ほてん)されない教育研究費の一部を支援する。

 大学病院をめぐっては、全国の国立大学病院で昨年度の赤字が過去最大の計285億円に上ることが明らかになった。国立大学病院長会議が7月に発表した。全体の約7割が赤字という。

 大学病院経営の改善には、診療報酬の改定が必要という意見が病院関係者には強い。文科省は、経営のために診療が優先される傾向があり、本来担うべき教育・研究の支援が必要で、高度医療の維持にもつながるとみる。

 一方、文科省は、国立大の人件費や研究費に充てられる運営費交付金の概算要求額を1兆1416億円とする方針を固めた。今年度予算より632億円(5.8%)多い。物価や人件費の高騰などを踏まえた。概算要求額では、過去最大の増額幅という。

 国立大経営については、国立大学協会が昨年、物価高や円安が続き、「もう限界」と苦境を訴える異例の声明を発表した。文科省も例年、運営費交付金の増額要求を続けているが認められず、近年は前年度と同水準が続く。年末の来年度予算編成に向けて政府内の調整が焦点となる。

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