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 大学の研究成果や人材をいかして起業する「大学発ベンチャー」。経営の経験がない研究者にとって、創業期の資金調達や経営人材の確保が課題となる。その壁をどう越えていくのか。2社の取り組みを取材した。

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フィールドワーカーズ代表取締役の星友矩さん。自社で製作した棒状の器具を手に、生息状況に関する山中での調査でマダニを捕獲する=2025年2月14日、長崎市の金比羅山、江口悟撮影

 蚊やマダニが媒介する感染症をいかに防ぐか。星友矩(とものり)さん(39)は、長崎大学熱帯医学研究所(長崎市)の助教として、この課題解決をめざし、研究を続けている。

蚊やマダニ媒介の感染症対策を事業化 フィールドワーカーズ(長崎市)

 その星さんには、もう一つの顔がある。大学発ベンチャー「フィールドワーカーズ」の代表取締役だ。

 会社は「衛生害虫対策のモノづくり」をうたう。3Dプリンターを駆使して作る、研究機材の企画販売とコンサルティングが中心だ。標本の向きを自在に調整できる観察器具や、虫を電動で吸引・排出できる装置などを開発してきた。

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打ち合わせをするフィールドワーカーズ代表取締役の星友矩さん(右)と長崎市のベンチャー企業「LAplust」でCOOを務める原崎芳加さん。AIを使って画像からマダニなど害虫の種類を同定する技術を共同開発している=2025年2月12日、長崎市、江口悟撮影

 起業したのは2022年6月。きっかけの一つは18年7月から半年間の英国での研究滞在だ。受け入れ先の教授が研究に関係した会社を経営し、資金を得ていた。それが世界の潮流と知った。

 一方、自身は国の科学研究費…

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