大学の研究成果や人材をいかして起業する「大学発ベンチャー」。経営の経験がない研究者にとって、創業期の資金調達や経営人材の確保が課題となる。その壁をどう越えていくのか。2社の取り組みを取材した。
蚊やマダニが媒介する感染症をいかに防ぐか。星友矩(とものり)さん(39)は、長崎大学熱帯医学研究所(長崎市)の助教として、この課題解決をめざし、研究を続けている。
蚊やマダニ媒介の感染症対策を事業化 フィールドワーカーズ(長崎市)
その星さんには、もう一つの顔がある。大学発ベンチャー「フィールドワーカーズ」の代表取締役だ。
会社は「衛生害虫対策のモノづくり」をうたう。3Dプリンターを駆使して作る、研究機材の企画販売とコンサルティングが中心だ。標本の向きを自在に調整できる観察器具や、虫を電動で吸引・排出できる装置などを開発してきた。
起業したのは2022年6月。きっかけの一つは18年7月から半年間の英国での研究滞在だ。受け入れ先の教授が研究に関係した会社を経営し、資金を得ていた。それが世界の潮流と知った。
一方、自身は国の科学研究費…