大学院生のメンタルヘルス問題に関する調査や研究は、日本にはほとんどない。そんな中、名古屋学院大・専任講師の横路佳幸さん(哲学)は海外の研究などを調べて2021年に論文にまとめた。どうすればこの問題を解決できるのか、横路さんに話を聞いた。
――哲学が専門なのに、大学院生のメンタルヘルス問題について、調べてみようと思ったきっかけは?
博士課程2年のときに、周りにメンタルに問題を抱える院生が増え始めました。急に音信不通になったり、休学したり。理系やほかの分野の友人に話すと「うちもそうだよ」と言われ、大きなショックを受けました。大学院の環境って、ヤバイのではないかと。自分自身は、当時は指導教員とうまくやれていたのですが、この問題は社会的に知られていないので、きちんと問題提起したいと思ったためです。
- 「生きててごめん」ゼミの後、うつ病に 22歳で命を絶った大学院生
――これまであまり問題として知られてこなかったのはなぜなのでしょうか。
研究者たちは誰もがうすうす感じてきた問題だと思いますが、放置されてきました。海外で本格的に調査がされるようになったのも、実はここ数年の話です。背景には、大学院生が声を上げられず、相談もできず、「こっそり去っていく」状況があったからだと思います。
「声をあげたら社会的に死ぬ」
――なぜ声を上げづらいのでしょうか。
大学院生は「弱者」です。指…