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控訴審判決を受け、「全面勝訴」と書かれた紙を掲げる大川原化工機の大川原正明社長(中央)ら=2025年5月28日午後2時34分、東京都千代田区、友永翔大撮影

 機器の不正輸出の疑いをかけられた機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)への捜査が違法だったとして、東京都(警視庁)と国(東京地検)に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決について、都と国は上告期限の11日、上告をしないと発表した。高裁判決が12日に確定する。警視庁と検察は、当時の捜査を検証するとし、逮捕・起訴した同社社長らに今後、直接謝罪する意向も示した。

 5月28日の高裁判決は、警視庁公安部の捜査や逮捕、東京地検の起訴について、一審に続き違法性を全面的に認めた。

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 上告断念の理由について、警視庁は「判決を精査した結果」、地検は「控訴審でも起訴が違法と判断されたことを真摯(しんし)に受け止めている。判決を覆すのは困難と判断した」と説明。警視庁、地検ともに、「関係者に多大なご負担をおかけしたことをおわびする」とコメントした。

 発表によると、警視庁の検証はナンバー2の副総監をトップに、警視庁幹部を含めた13人の態勢で行う。関係者への聴取などをして問題点を検証し再発防止策を示すという。検察の検証は、最高検が担い、起訴に至った経緯などを調べる見通し。

 大川原化工機側は第三者による検証を求めていたが、警察と検察の検証に外部の有識者らは入っていない。

 大川原化工機の社長ら3人は2020年、軍事転用可能な噴霧乾燥機を許可なく輸出したとして、外国為替及び外国貿易法違反の疑いで逮捕・起訴され、初公判直前の21年に起訴が取り消された。

 高裁判決は、公安部や地検が追加実験などをしていれば、不正輸出に当たらないと判断できたなどとして捜査の違法性を認定。逮捕や起訴についても、合理的な根拠がなく違法だと結論づけていた。

納得できる検証と再発防止策を 編集委員・吉田伸八

 「大川原化工機」の冤罪(えんざい)事件をめぐる民事訴訟で、警視庁(都)と東京地検(国)が上告を断念した。違法捜査を厳しく指摘した東京高裁の判決が確定する。逮捕から5年、起訴取り消しから4年を経て、警視庁と検察は、冤罪(えんざい)を生んだことを認めて謝罪し、捜査の検証をせざるを得ないところに追い込まれた。違法に逮捕・起訴され、11カ月にわたって勾留された大川原社長たちはもちろん、国民、都民が納得できる内容の検証結果と再発防止策が求められる。

 違法捜査を認めた一審判決に…

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