大工の数が、20年間で半減している。注文住宅がいっそう「ぜいたく品」となり、必要なリフォームが滞ることも懸念されている。不安定な待遇を改善しようと、業界には変化の兆しもある。
「大工が見つからない」
大工とハウスメーカーなどとのマッチングイベントを開くクラフトバンク(東京都)には、こんな問い合わせが相次ぐ。
イベントでは、大工の前に列ができる。ハウスメーカーの担当者たちが名刺交換を求めて並ぶ。大工を確保しようと、大工を抱える中小工務店に電話で問い合わせるケースも珍しくないという。
「どこからでも仕事がもらえるし、次々に断っている」。5年前から、関東地方で従業員2人の工務店を営む男性(30)は話す。
より大きな工務店から、注文住宅の建設作業を請け負う。技術と肉体労働が求められる仕事に見合わない「赤字レベルの条件」を示されることも多いが「昔のように『下請けが下』という認識はない。強気で交渉する」。週6日、午前8時~午後6時に働く。男性自身の手取りは、おおむね1千万円を超える。
大工は1990年代、民間企業の「大人になったらなりたいものランキング」で1位になったこともあった。だが、最近は11位以下の「圏外」に。国勢調査によれば、「大工就業者数」は80年の93万人をピークに減り続け、2020年には30万人を割った。35年にはさらに約15万人にまで減る、という試算もある。
国土交通省によると、20年度までの15年間で新設住宅着工戸数は35%減った。大工就業者数はほぼ同時期に45%減っており、減少ペースで上回る。
注文住宅は「ぜいたく品」に?限られる転職手段
個人向けに、注文住宅の引き…