兵庫県西宮市で被災した学者と作家は、阪神・淡路大震災を民主主義の危機と考えた。
突如、電話が鳴った。大阪市内の法律事務所。「オレ、小田やけど、知ってるか?」
30年前、弁護士の伊賀興一(76)は作家の小田実(まこと)から突然の電話を受けた。震災直後の1995年8月に訪米し、被災者に援助金を支給する米連邦緊急事態管理庁(FEMA)の報告をまとめていた。それを知った小田が連絡してきたのだ。
阪神では義援金の配分が大きな問題になった。1800億円近い善意が寄せられたが、46万世帯の住まいが全半壊し、1世帯あたり40万円に満たない計算だった。住宅再建の公的支援はない。
民主主義の基本は市民。市民の生活基盤が危機に陥ることは民主主義国家が危機に陥ること。だから被災者に公的援助金を支給する――。
小田は米国の明快な論理にひ…