インカ帝国の首都防衛のために建造されたサクサイワマン遺跡。巨大な石組みの上からクスコ市内が一望できる=ペルー・クスコ、上田潤撮影

 いわゆる大航海時代に欧州の植民者から持ち込まれた病気に対し、南米の先住民族がとりわけ脆弱(ぜいじゃく)だったのは、先史時代の人類の移動・移住に伴って免疫にかかわる遺伝子の多様性が低下したことも一因だったようだ。そんな研究成果を、日本も参加する国際研究チームがユーラシアと南米の先住民族らのゲノムを解析し、米科学誌サイエンスに発表した。

 現生人類(ホモ・サピエンス)はアフリカで誕生し、旅を始めた。氷河期で陸続きだったユーラシアと北米大陸を経て、最終到達点の南米最南端のティエラ・デル・フエゴにたどりついたと考えられている。

 研究チームは、ユーラシアと南米の139の先住民族グループの1537人のゲノムのDNA配列を調べた。すると、旅の「終着点」にあたる南米の系統では、遺伝的多様性が低かった。とりわけ免疫にかかわるHLAタイプの多様性が南太平洋の島国程度に乏しかったという。

 南米では15~17世紀の大航海時代に、欧州から植民者が流入し、例えば、高い文明を誇ったアンデス地方のインカ族や南米最南端のヤーガン族などの先住民コミュニティーが滅亡した。軍事力の差のほかに、欧州から持ち込まれた病気が影響したのではないかと指摘されてきた。

 研究責任者のシンガポール・南洋理工大のヘリム・キム准教授は「先住民のコミュニティーが、欧州からの植民者によって持ち込まれた病気によりかかりやすかったと説明できる」と解説する。

南米で何が起きていたのか

 今回の研究では、時間経過と…

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