(15日、第107回全国高校野球選手権大会2回戦 岩手・花巻東4―8兵庫・東洋大姫路)
将来の夢は「世界を笑顔にするCEO(最高経営責任者)」だ。
花巻東の主将・中村耕太朗は「ビジネスを通じて、貧しい人々を救いたい」と願う。
夢を抱くきっかけは、母・祐美子さん(50)の存在が大きい。
長年、日本のODA(政府開発援助)に携わり、途上国の官庁で法曹や保健関係の人材を育てる仕事をしている。今の仕事先はアフリカで、年の3分の1ほどを現地で過ごす。岩手県花巻市の自宅からも、オンラインで現地とつながる。
そんな母の姿を見て、中学1年から「将来は米国で勉強したい」と思うようになった。
高校はもともと、県立トップの進学校を受験しようと考えた。だが、地元には大谷翔平(ドジャース)や菊池雄星(エンゼルス)らが育った名門・花巻東があった。佐々木洋監督の指導は野球技術にとどまらず、「ここでしか学べない人間教育がある」とも聞いた。
野球にも打ち込んでいたので、進路は悩みに悩んだ。中3の10月、花巻東へ進路を絞った。「高校の3年間は長い。勉強も、勉強以外も学びたい」と考えた。
中学では生徒会長を務めていた。入学後すぐ、佐々木監督に適性を買われ「学年キャプテン」になった。以来、学年のまとめ役となり、昨秋の新チーム発足からは主将を務めている。選手としては控え捕手で、背番号「10」を背負う。
「岩手から日本一」を掲げる名門を率いるのは重責だ。最大の試練は今年5月。春の県大会で初戦負けしたことで訪れた。夏の地方大会のシード権を18年ぶりに失った。
チームの空気は沈滞した。春…