来年4月に開幕する大阪・関西万博に3兆円近い経済波及効果があると、日本政府が主張していますが、本当でしょうか。大企業だけに偏らず、中小企業や地域が潤うための方策とは。大阪を地盤とするシンクタンク「アジア太平洋研究所」で、同じく試算を行った大阪経済大学の下山朗教授(地域経済)に聞きました。
――経済産業省は今年3月、万博による国内経済への波及効果が全国で約2・9兆円に上ると発表しました。下山さんたちの研究でも効果は2・7兆円~3兆円超とされています。金額が大きすぎないですか?
今回の万博では、会場の建設や運営、関連のインフラ整備などに計7275億円(うち国は1620億円、大阪府・市は1344億円、日本国際博覧会協会は1160億円)が費やされます。このほか、私たちは国内外の来場者が使う入場料や宿泊代などを計8913億円と想定し、万博に投下されるお金の総額が約1・6兆円になると考えています。
経済波及効果は、こうした投下総額をもとに、産業ごとの取引の流れを示す「産業連関表」を使って算出されます。私たちの調査では、投下総額の大半を占める来場者の消費の予想額をより丁寧に算出しており、現実に近い数値になっていると考えています。
――アジア太平洋研究所は万博を推進する関西財界がつくるシンクタンクです。お手盛りの調査になっていませんか?
調査に際し、インフラ整備などについては、大阪府などとも協議し、最新のデータを受け取りました。ただ、より正確な経済波及効果の算出に必要な、広告費の支出先や、来場が予想される国籍別の外国人観光客数など、そろわなかった資料もあります。現在ある情報をもとにした調査の信頼性には自信を持っていますが、この数値は事前の評価であり、万博後に判明する実際の結果と突き合わせて、その違いや原因を検証することが欠かせないと思います。
記事後半では、日本国際博覧会協会がはじく3千万人近い予想来場者数の詳細と、実現の可能性を紹介しています。
万博で潤う業界はどこか 利益最大化に必要な方策は
――金額が独り歩きしている印象ですが、実際にはどんな業種や会社が利益を得られるのでしょうか。大企業に偏りませんか?
直接的に潤うのは、建設や観…