相模原産のブドウを使ってワインを醸造しているケントクワイナリー(相模原市中央区上溝)が、本格操業3年目に入った。天候不良に苦労しながらも「相模原といえばこれだ、というワインを育てていきたい」と意気込む。
3月下旬、業者向けに開いた試飲会に、同社のワインを取り扱う県内外の飲食店などの関係者が集まった。
「地元の食材の料理を売りにしているので、地元産ワインはなくてはならない品」(海老名市・レストラン)、「スパイシーさもあって、おいしかった。地元の味としてお客に薦められる」(東京都町田市・酒販店)。4月に発売する主力商品は、おおむね好評だった。
顧客とワイン論議に花を咲かせていたワイナリーの責任者、森山錬一(けんいち)さん(38)は「試飲会は、販路を広げるというよりは、今いる顧客に引き続き買ってもらえるよう、意見や感想を聞く場」と位置づけているという。
同ワイナリーは、地域で栽培されるブドウを使えば製造量が少なくてもワインの製造免許が得られる「ワイン特区」の制度を使い、建設廃材の再生に取り組む大森(だいしん)産業(相模原市中央区)が経営する。2014年に農業法人を設立してブドウ栽培に取り組み、23年には同区上溝に自前の醸造所も構えた。年間約4千本の「相模原ワイン」を製造する。
操業2年目の昨年、悩まされたのが天候不良だ。とりわけ夏に雨が続いたことでブドウの皮の色付きが悪く、仕上がる赤ワインの色も薄くなってしまったという。
そこで、赤ワイン用の品種のブドウを一部、白ワインづくりに回した。白ワインは醸造過程で皮を使わないため、色の心配をしなくてすむ。同ワイナリーの醸造技術者、加賀山茂さん(73)は「原材料の質に制約がある年でも、いいお酒をつくりたい」と話す。
森山さんは「2年間やってみて、地元ワインとして気に入って下さる顧客もできた」と手応えを感じている。一方で、天候に左右されるため「品質を安定させる難しさも思い知った」と語る。
ワイナリー設備の遊休期間である夏~秋の事業として、ブドウと旬が異なる地元産のイチゴやブルーベリーを使った果実酒にも取り組んでいる。
「昨年から始めたイチゴのお酒は好評で、すぐに売り切れた」と森山さん。今年は、ユズやキウイフルーツを使った商品を試したいという。