現場へ! 文化財どう活用(1)
それは、不思議な光景だった。世界遺産の城の前庭に羽根の形の造形物が突き立ち、建物内の板の間に「麦畑」が広がる。
京都市にある二条城の二の丸御殿台所・御清所(おきよどころ)(重要文化財)で、今春開催されたドイツの芸術家、アンゼルム・キーファーによる大規模個展。城への入場券800円のほか、別途チケット代2200円が必要だったにもかかわらず、3カ月弱の会期中に4万2千人が訪れる人気だった。
京都市元離宮二条城事務所担当課長の式部圭(56)は「ぜひ二条城でとのことだったので、建物を傷めないかどうか事前に十分に検証したうえで、普段は非公開の台所を使ってもらった」と説明する。「伝統的な建物と現代美術が融合することで、まったく新しい空間が生まれた。二条城の価値を世界的にもアピールできたと思っています」
二条城では和洋折衷の庭園である清流園や、旧角倉了以(すみのくらりょうい)屋敷から移築された茶室の香雲亭などを使った年間60組限定の「二条城ウェディング」のほか、「桜まつり」や「夏まつり」、ヨガ、昼食会などのイベントが1年に二十数件実施されている。「利用希望はたくさんあるのですが、これ以上は受けきれないのが現状」
城という文化財を、観光資源としてより活用しようという動きは全国に広がる。
香川県丸亀市は、昨年7月か…