再オープンした「土手の珈琲屋 万茶ン」と5代目店主の木下郁さん。太宰の写真や関係する本が並ぶ=2024年12月10日午後6時36分、青森県弘前市、江湖良二撮影

 東北の喫茶店で最古とされる1929年創業、作家の太宰治が訪れたという「土手の珈琲(コーヒー)屋 万茶(マンチャ)ン」(青森県弘前市)。このほど5代目店主に同県黒石市出身の木下郁(かおる)さん(31)が決まり、再オープンした。特に太宰ファンではないという木下さん。昭和レトロな喫茶店を新たなコンセプトで経営しようと考えている。

 太宰が旧制弘前高校(現弘前大学)時代に通い、小説「津軽」にも描かれたとされる万茶ン。高校時代の太宰の写真が壁に掛かり、創業時からあるシャンデリアが古風な雰囲気を醸し出す。作家の石坂洋次郎や井上ひさし、俳優の奈良岡朋子らも来店した。

 「太宰は何冊か読んだけど、特別ファンではなかった」という木下さんだが、同店には社会人になってから通っていた。地元のホテル勤務やタクシー運転手、弘前市内のアップルパイ店を紹介する「アップルパイコンシェルジュ」など経歴は多彩で、SNSで弘前の魅力を伝えてきた。「会社員よりも自由に発信ができるから」と考え、公募に応じ、新店主に選ばれた。

 開店資金はクラウドファンディングで募った。「40代50代の方が圧倒的に支援してくれた」と言い、数カ月で目標の200万円以上が集まった。店の伝統を感じる一方、「敷居の高さをいい意味で払拭(ふっしょく)したい」とも語る。

 店では従来のメニューを引き…

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