作家太宰治(1909~48)が旧制弘前高校(現弘前大学、青森県弘前市)時代に通い、東北最古の喫茶店とされる「土手の珈琲(コーヒー)屋 万茶ン(まんちゃん)」。店主の交代に伴い2024年12月に再オープンすると、昭和初期のレトロな雰囲気は残しつつ、漫画や初音ミクが並び、オンラインゲームのオフ会が開かれるなど、令和のサブカルチャー拠点として変わりつつある。

桜ミクなどのフィギュアが並ぶ「万茶ン」の棚と店主の木下郁さん=2025年6月17日午後1時46分、青森県弘前市、江湖良二撮影

 弘前市が舞台の漫画でアニメ化もされた「ふらいんぐうぃっち」。店主の木下郁さんがファンで、店内入り口近くには、今年6月発売の14巻まで全巻そろった専用コーナーがあり、客は本を自由に手にとることができる。

 物語は、15歳になった見習い魔女の木幡真琴が、慣習に従い横浜市の実家を出て、弘前市の親類宅に居候しつつ修行する。その日常が詳細に描かれ、舞台となる弘前公園や藤田記念庭園は、ファンが訪れる聖地巡礼の場となっている。

「ふらいんぐうぃっち」の全巻やグッズ、交流ノートが並ぶコーナー=2025年8月1日午後2時42分、青森県弘前市、江湖良二撮影

 真琴の関連グッズや資料をあしらったパネルが設けられ、交流ノートには「(アニメの)2期切望‼」「ふらいんぐうぃっち大好き」などとつづられている。

 店主の木下さんは「ふらいんぐうぃっち」が地元でも知る人が少ないのが気になる。「もっと知られて欲しい。作者の石塚千尋さんに店に来ていただいて、漫画に店を登場させて欲しい」と話す。

 弘前市在住の石塚さんはこう応える。「コーナーはありがたいです。(一般の)喫茶店はストーリー作りのときによく使います。想像力を膨らませたり、脳をリラックスさせたり。お客さんを観察してネタ作りしてみたりできる、大切な場所。お気に入りの喫茶店を(作中に)よく出しているので、万茶ンさんも描ける機会があったら描かせていただきたいです!」

店休日はオフ会の会場にも

御城プロジェクトのオフ会で、城にちなんだボードゲームを楽しむファン=2025年4月27日午後2時43分、青森県弘前市、江湖良二撮影

 このほど、万茶ンで開かれたのはオンラインゲーム「御城プロジェクト:RE~CASTLE DEFENSE~」のオフ会。江戸城や大坂城に、ウィンザー城、紫禁城といった古今東西の名城に加え、竜宮城など架空の城まで、美少女に擬人化されたキャラクターを育成してネット上で戦わせる。主催する青森市のMAMEPYさんは、その魅力を熱く語る。

 「ふんわりとゆるいキャラが、戦えば実は強い。現実のお城の特徴がキャラにも反映され、戦略を考えるのが楽しい」

 MAMEPYさんは「天空の城」として知られる竹田城(兵庫県)がお気に入りだ。現実の城や歴史にも興味があり、各地の城を訪問、その結果を報告している。

桜ミクや雪ミクも、新店主「若い人に間口広く」

 これまで近くの藤田記念庭園…

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