Warming Is Getting Worse. So They Just Tested a Way to Deflect the Sun.
4月2日の午前9時少し前、エンジニアのマシュー・ガレリ氏はサンフランシスコ湾に係留されている退役空母の甲板の上でしゃがみこみ、耳栓を着けてから、スイッチを入れた。
数秒後、人工造雪機のような形の機材がゴロゴロとうなり始め、耳をつんざくような音が響いた。微粒子がつくる霧が機材の噴き出し口から噴射され、空高く舞った。
雲を明るくして太陽光の一部を宇宙空間にはね返すための技術を使った米国初の野外実験は、こうして始まった。塩のエアロゾルを使うこの技術は、危険なほどの気温上昇に見舞われている地球を一時的に冷やす方法として期待がかかる。科学者たちの狙いは、何年もかけて作り上げたこの装置が、実験室の外でも適切な大きさの微粒子を噴射し続けられるか、信頼性を確認することにあった。
もしうまくいけば、次の段階は、大空を狙い、海上の雲の組成を変えることへの挑戦だ。
人類は化石燃料を燃やし続け、大気中に排出する二酸化炭素の量も増え続けている。地球の気温上昇を産業革命以前と比べてプラス1.5°C以内という、比較的安全なレベルに抑える国際的な目標の実現は遠のきつつある。そのため、気候システムに意図的に介入するという構想が現実味を帯びてきた。
- 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」
「雲を明るくして、太陽光をはね返す」という、奇想天外とも思える構想。使うのは塩です。装置の開発にはビル・ゲイツ氏も資金提供したそうです。
大学や財団、民間投資家、連…