「2人で一緒に裁判所に来てください」

 8月30日、家裁から一本の電話があった。

 もしかしたら、願いがかなうかもしれない――。東日本に住むアルバイトのトランスジェンダー男性(戸籍上は女性)は、期待を膨らませ、その日を待った。

 2023年3月、公務員のトランスジェンダー女性(戸籍上は男性)と結婚した。性自認と戸籍上の性別が「逆転」した状態の夫婦だったため、24年5月27日、それぞれ家裁に性別変更を申し立てていた。

 性同一性障害特例法には、性別変更の際に結婚していないことを求める「非婚要件」がある。この要件を機械的にあてはめれば、いったん離婚して性別変更後に再婚するか、結婚を続けて性別変更をあきらめるかを選ばなければならない。

 だが、2人は婚姻関係を続けながら性別変更を行う「第3の道」をめざした。背景には、特例法のあり方を問い続けてきた当事者たちの存在があった。

ケーキで祝った夜

 家裁は電話をした日、2人の…

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