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写真・図版
トマト卵=島村温子撮影

 猛暑の中、やっと実った夏野菜を余さずおいしく調理したい。簡単で健康づくりに役立てば、なおうれしい。中国四川料理の荻野亮平シェフにおすすめレシピを教わりました。知恵もコツもいっぱいです。(長沢美津子)

記事の後半で、2品のレシピをくわしくお伝えします。

熟したトマトの救世主にも

 紹介するのは、トマトを加熱する食べ方だ。まずは中国の家庭料理の炒めもの「トマト卵」。手近な材料でパッとごはんのおかずになって、熟しすぎのトマトも使い切れる。トマトに、加熱で増えるうまみ成分があることも最近の研究でわかってきた。

 卵はふわっと、トマトもやわらかく、ふたつが一体化した仕上がりが理想だ。

 指南役の荻野さんは、「中国各地で作られていて、味付けも甘みを加えたり、ニンニクをきかせたりとそれぞれです」。作りやすく、油の量も控えめのレシピをリクエストすると、「水炒(シュイチャオ)」という調理法を教えてくれた。

 水で炒める。不思議だが、熱い汁に溶き卵を注いでふんわりさせるところは、日本料理の卵とじに近い。加えるのは香りのネギ、味付けに塩としょうゆ。荻野さんは「トマトは甘みと酸味とうまみを持っています。どんな要素を補うと効果的かを考えます」。

 ポイントはふたつ。ネギを焦がす手前まで炒めて風味を際立たせること。チャーハンの要領だ。そして少量のしょうゆでうまみを添えること。食べてみると、薄味だが物足りない感じはしない。

 「炒めものは、強火で手早く」というのも、すべてにあてはまるわけではない。トマト卵では、フライパンに入れたトマトが温まるまで、汁気がなくならないよう中火を保つ。沸いたところに卵を流し入れ、汁気を包みこむように大きく混ぜて仕上げる。

 もう一品、同じ材料をスープ仕立てに。小麦粉で作る粒々の麺を入れた料理で、中国語で「やまいだれに乞やまいだれにくさかんむりに合湯(ガーダータン)」と呼ぶ。「ちょっとおなかがすいたから、何か簡単に作ろうという時の料理です」と荻野さん。キャンプの朝ご飯にもよさそうだ。

 味付けは塩と、塩味をまろやかにする砂糖、アクセントのコショウ。しっかり火を通したいり卵とトマトからうまみがでて「だし」いらずだ。暑い日に熱いもので、疲れがふっと、遠のいていく。

教える人・荻野亮平さん(四川料理巴蜀)

 おぎの・りょうへい 1978年大阪生まれ。辻調理師専門学校卒業後、東京・千駄木の四川料理店「天外天」、四川留学、北九州・小倉の台湾料理店「欣葉」を経て、福岡に「四川料理 巴蜀(はしょく)」を開く。東京・浅草に店を移し、今春から週の半分は信州大学大学院に唐辛子の研究に通う。

トマト卵

 【材料・2人前】 トマト150g、長ネギ25g、卵3個、ゴマ油大さじ½、水大さじ3、しょうゆ小さじ⅓、塩小さじ¼

【作り方】

①トマトはひと口大の乱切りにする。長ネギは粗いみじん切りにする。

②卵は溶きほぐしておく…

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