(24日、第107回全国高校野球選手権岐阜大会準々決勝 関商工9―1高山西=7回コールド)
「(35度を超える)この気温では、長いイニングは持たない。ほかの投手を挟んでエースにつなぎたかった」
そう考えて試合に臨んだ高山西の萩尾洋行監督だが、先発させた下畑晧平投手(3年)は一回表に4安打を浴び、一回途中で代わった柳沢侑希投手(3年)も三回までに5安打を浴びるなど、隙のない関商工打線を前にもくろみは崩れ、序盤に7点を失った。
萩尾監督が「エース」と呼んだのは背番号18の小田慎二郎投手(3年)。5月ごろから調子を上げ、水本星冴主将(3年)は「一番信頼を持って抑えてくれると思っているのは小田」と太鼓判を押す。萩尾監督は「本当は前の投手たちでもう少し持たせて、小田の準備が整った状態で投げさせたかった」というが、三回無死満塁のピンチでの登板となった。
「18番はエースナンバー」。そう監督に言われて、自分もその思いで信頼に応えようと4三振を奪うなど気合を入れたが、準備万端とはいかず、試合終了の七回までに本塁打を含む5安打を浴び、2点を与えた。
「自分が取られた点もあったので、自分がチームに良い流れをもたらしたかった」。その思いが四回の打席で爆発した。内角へのスライダーを振り抜き、中前適時打でこの日唯一の得点となる1点をもぎ取った。普段は走り込みなど投手としての練習のみで、打者としての練習はほとんどしていないが、自身が「執念」と振り返る一打だった。
今回も「飛驒から甲子園」の夢は実らなかったが、小田投手は「後輩たちには挑戦者として硬くならずに挑み続けて欲しい」と穏やかな表情でほほ笑んだ。