失語症となった医師への言語訓練。「こちらが教えられます」と言語聴覚士の小池京子さん(左)=2025年2月26日午後1時50分、東京都清瀬市竹丘3丁目、織井優佳撮影

現場へ! 言語聴覚士 知ってる?(2)

 言葉が聞こえても意味がわからない。思った言葉が出ない、違う言葉になってしまう。文字を思い出せない。文字や文章の意味がわからない……。

 失語症は、病気や事故で言葉に関係する脳の領域が損傷を受けて発症する。損傷の部位や程度によって症状は様々だが、「話す、聞く、読む、書く」が不自由になる。

 全国で失語症の人は約50万人と言われるが、困難さを自分で伝えることが難しいこともあり、実数は把握できていない。この人たちに、言語訓練などでコミュニケーションの回復を図るのが言語聴覚士だ。

 東京都内の60代の男性医師が異変に気づいたのは、昨年6月のことだった。両手を前に出すと、右手首が自然にねじれる。「なんだこれは」と思ったが診察に忙しく、末梢(まっしょう)神経の問題かと考えていた。しかし、夏には右手で箸が握れなくなった。名前以外、字も書けない。診察中、薬の処方で計算が難しくなったのに驚き、MRI検査を受けて左の脳に梗塞(こうそく)が見つかった。

 数百人の患者を抱え、70歳までは仕事を続けるつもりだったから、国立病院機構東京病院(東京都清瀬市)の回復期病棟に入院してリハビリに取り組んだ。9月の退院時にはかなり回復し、現場に戻れそうと本人も周囲も期待した。

 だがその後、脳梗塞を数度再…

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