Smiley face
写真・図版
ニューヨーク州サラトガスプリングスにあるスパシティーモーターロッジ。ラークホテルズが2018年、買収して改装した=ニューヨーク・タイムズ

Motels Are Having a Moment

 リサ・レノックスさんは2022年、テキサス州スティーブンビルの友人を訪ねたとき、「インターステート・イン」を偶然に見つけた。フォートワースから西に1時間ほどの高速道路沿いにあるそのモーテルは古びていた。地元の警察では悪名高く、部屋は1泊40ドル(約6千円)だったが、配管と配線の交換が必要で、アスベストの除去もしなければならなかった。

 ところが、レノックスさんはスペースエイジ(訳注:1960年代から80年代に世界で流行した近未来や宇宙を想像させる多くの芸術作品が発表された時代)を彷彿(ほうふつ)とさせる巨大な傾斜した屋根など、その奇抜なデザインにすぐに親近感を覚えたのだった。

 「これらのモーテルは、いかにもアメリカらしい」と彼女は言い、「本当にユニークなデザイン。でも、すべて荒廃していて、多くは取り壊されつつある」。レノックスさんは接客業の経験はなかったが、さまざまなところを旅してきたので、良いホテルの部屋とはどんなものかを知っていた。彼女はその年、そのモーテルを購入し、コーネル大学でオンラインのホテル経営コースを受講。9月末までに改装する35室のインターステート・インと、もう1軒のモーテルをきょうだいたちと協力してオープンする予定だ。3軒目のオープンは来年、予定している。

写真・図版
2022年にモーテルのインターステート・インを購入したリサ・レノックスさん=ニューヨーク・タイムズ

 レノックスさんたちだけではない。モーテルが注目を集めているのだ。カリフォルニア州でモーテル3軒を所有するノマダ・ホテルグループの創設者でクリエーティブディレクターのキンバリー・ウォーカーさんは、いわゆる「モーテル文化」の人気が高まっていると語る。この文化には、モーテルの所有や改装に関心を持つ人、モーテルに親しみを持つ旅行者、特に若者が含まれるという。

 近年、年配の世代には時代遅れとしか思われない質素な道端のモーテルが、冒険に心引かれる新たな若いファン層に受け入れられ始めている。奇抜なデザインのモーテルを紹介するインスタグラムのページには、数十万人のフォロワーがいる。受賞歴のあるコメディードラマ「シッツ・クリーク」はモーテルが主な舞台で、熱狂的なファンを持つ。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

時代遅れと思われがちだったモーテルですが、新型コロナを経て注目を集めています。日本でも「昭和レトロ」が若い人たちの間で人気になっていますが、米国でも20世紀半ばに流行したカルチャーが若い世代を引きつけているようです。

■新型コロナでモーテルの見方…

共有