保存活用を求める声が高まるヴォーリズ建築の住宅=奈良市高畑町

 米国出身の建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964)が設計し、奈良県内で唯一現存するとされる奈良市高畑町の住宅の解体が検討されていた件で、所有者の大和ハウス工業(大阪市)が16日、保存活用を求める住民らと面会し、解体を当面見合わせる方針を伝えた。

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 住宅は1930年代に建てられたとみられる木造2階建てで、煙突や円窓などの意匠が特徴。今年3月に購入した大和ハウス工業が解体準備を進めていた。

 同社は当初、5月上旬の作業開始を計画していたが、これに対し、地元住民らでつくる「高畑の歴史と風土を語る集い」の大槻旭彦代表や大学名誉教授らが、解体の再考を求める要望書を大友浩嗣・大和ハウス工業社長に送付した。

保存活用を求める声が高まるヴォーリズ建築の住宅=奈良市高畑町

 大槻代表によると、その後、同社から連絡があり、16日に奈良市内で大和ハウス工業本社と奈良支店の関係者と面会したという。同社はこの面会について、「しばらく解体は見合わせ、社内でどのような協力ができるか検討したいと説明した」としている。また、同社は市にも状況を説明、住宅の内部を地元の建築士に公開した。

 大槻代表は「とりあえずは歓迎したいが、今後同社が転売するにしても建物を現状のまま売るのは難しいという話だった。こちらもできることを考えていきたい」としている。

 「語る集い」は7月6日に市ならまちセンター(東寺林町)でヴォーリズ建築の専門家らを招いたシンポジウムを予定している。

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