落雷事故があった帝塚山中学・高校グラウンド=2025年4月11日午前9時51分、奈良市学園中1丁目、朝日放送テレビヘリから、小杉豊和撮影

 奈良市学園中1丁目の帝塚山中学・高校グラウンドで10日午後に起きた落雷事故で、同校は11日、当時の状況について「強い雨が降り始めた直後、落雷があった」と説明する文書を公表した。事故では、中学生2人が重体となっている。文部科学省は各都道府県の教育委員会などに、落雷事故の防止を求める通知を出した。

  • 相次ぐ部活動中の落雷事故、どう防ぐ 雷鳴聞こえたら建物や車内へ
  • 奈良市の学校グラウンドに落雷と通報 中高生6人搬送、1人心肺停止

 落雷は、グラウンドでサッカー部などが部活動をしていた10日午後5時50分ごろに発生。男子中学生5人、女子高校生1人が救急搬送された。気象庁によると、奈良県には10日午前から雷注意報が出ていた。

 同校は11日を休校にし、ホームページ上に状況を説明する文書を掲載。搬送された6人のうち中学生の3人が入院中で、3人は当日中に帰宅したことを明らかにした。

 奈良県警奈良西署や搬送先の病院によると、事故後に心肺停止だった男子中学生と、意識混濁の状態だった男子中学生が意識不明の重体。意識混濁の状態だったもう一人の男子中学生は意識が回復した。

 同校はホームページに掲載した文書で落雷当時の状況として、午後5時40分ごろに降り始めた小雨が、いったんやんだ後に強い雨となり、直後に落雷があったと説明。現場には生徒114人と部活動の顧問の教員ら8人がいて、救急車を待つ間にAEDを使って被害を受けた生徒の心肺蘇生が施されたという。

 落雷事故を受けて、文部科学省とスポーツ庁は11日、屋外での体育活動などについて「指導者は落雷の危険性を認識し、天候の急変などの場合にはためらうことなく計画の変更・中止などの適切な措置を講ずること」とする通知を各自治体の教育委員会などに出した。

 児童生徒が落雷の危険を感知した場合に、ためらわないで指導者に申し出るよう指導することも求めた。雷の発生エリアを予測する気象庁の「雷ナウキャスト」の活用も勧めている。

 奈良県と奈良県教育委員会も11日、私立を含む県内の学校に対して同様の通知を出した。

 2018年に文科省がまとめた「学校の危機管理マニュアル作成の手引」では、グラウンドなどの開けた場所では雷が人に落ちることがあり、その場合約8割が命を落とす危険性がある、としている。

 屋外でのスポーツ活動中の落雷事故は、過去にもたびたび起きている。

 14年には愛知県の高校グラウンドで、野球部員が落雷で死亡。昨年4月には宮崎県の学校のグラウンドへの落雷で、サッカーの練習試合に集まった18人が救急搬送された。

 雷に詳しい近畿大学の森本健志教授(大気電気学)は「子どもたちには、雷が見えたり聞こえたりしたら避難する、という意識をもってほしい。しかし、直前まで晴れていても、落雷することはある。情報に接しやすい大人は『雷ナウキャスト』などを利用して安全対策を試みることが大切だ」と話した。

共有
Exit mobile version