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 人とシカが生活圏をともにしてきた古都・奈良。世界的に非常に希少な景色の中で、独特の生態が生み出されてきたことが近年の研究で明らかになってきた。千年以上にわたり築かれた環境を、未来にどう渡すかの局面も迎えている。

写真・図版
シカを撮影する観光客ら=2023年5月16日午後、奈良市の奈良公園、林敏行撮影

 警戒することなく観光客の間を自由に歩き回るニホンジカ。奈良公園(奈良市)では当たり前に見られる光景だが、野生動物のシカがこれだけ都市に溶け込んで生活しているのは世界でもめずらしい。

「神鹿」として保護されてきた奈良のシカ

 奈良時代の768年、春日大社(世界遺産)が創建された際、神が白いシカに乗って奈良の地に降りたったという伝承が生まれた。以来、奈良では、シカは神の使い「神鹿」としてあがめられ、手厚く保護されてきた。1957年には「奈良のシカ」として国の天然記念物にも指定された。

 そんな奈良公園のシカだが…

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