全国で活躍する文化財専門職員や学芸員が多く出ている奈良大学の文化財学科。その卒業生たちの研究会が、論文集を世に出した。考古学や古代史など、文化財に関わる多彩な論考が載り、読みごたえのある一冊に仕上がった。
奈良大では1979年に、全国初となる文化財学科ができた。論文集「山陵(みささぎ)の丘文化財學(がく)論集」は、卒業生や教員、元教員らでつくる「山陵の丘研究会」が刊行した。
論文集は20編からなる。「粟原寺・石位寺と額田王」(東野治之氏)、「王宮中枢正殿群の系譜―藤原宮大極殿後殿に関連して―」(相原嘉之氏)――。研究者らによる奈良の遺跡などについての論考も目をひくが、九州や北陸の古墳や遺跡などをテーマにした論考も。香芝市の戦争遺跡・屯鶴峯(どんづるぼう)の地下壕(ごう)の遺構を紹介したものもある。扱っている地域も時代も幅広い。
奈良大の文化財学科といえば、学長も務めた考古学者の故・水野正好氏の存在が大きい。考古学の最新成果を分かりやすく伝えて、学外でもファンが多かった。論文集の最後には、水野氏と卒業生たちによる貴重な対談「水野正好 古墳を語る」も掲載している。
A4判、228ページで2500円(税込み)。問い合わせはメール([email protected])で。(清水謙司)