新型コロナウイルスの感染防止対策などの業務の委託料を過大に請求されたとして、奈良県は5日、委託先の旅行大手JTBに約6400万円の損害賠償を求める訴訟を、奈良地裁に提訴すると発表した。調査の結果、勤務実態のない業務が確認されたと主張している。
県によると、県は同社と、飲食店や宿泊施設の感染防止策の認証制度事業やワクチン接種に関するコールセンター業務などの委託契約を結んだ。
昨年以降、定期監査による指導を受け、JTBからの業務実績の報告と県が後から取り寄せたシフト表を照らし合わせるなどしたところ、2021~23年度の9件の契約で勤務実態がないとみられる例が確認されたとしている。
過大に請求されていたとみられる部分の委託料の返還についてJTBと交渉をしたが、見解に相違があったため、提訴することにしたという。
さらに県は、他の契約も含めて業務責任者の勤務実態の資料が出されておらず、過大請求額が2億円以上になる可能性もあると主張している。
JTB広報室は朝日新聞の取材に「県との履行内容確認・検収も完了している案件で、契約内容からは想定もしなかった返金要請であったため、説明と協議のお願いをしていた」とし、「訴訟提起に驚いているが、引き続き誠実に対応していく」とコメントした。
自治体の新型コロナ関連業務をめぐっては、旅行会社の不正が相次ぎ、日本旅行業協会が調査して再発防止策を出している。(阪田隼人、机美鈴)
知事が提訴に踏み切ったのは
奈良県の山下真知事は5日、JTBを提訴する方針を明らかにした会見で「憤りを感じる」「不信感がある」と、強い言葉で同社の対応を批判した。
発端は昨年7月。県の定期監…