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ロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」(弘前れんが倉庫美術館蔵、一般財団法人奈良美智財団寄贈)の再現展示=Photo: Keizo Kioku
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 大正時代につくられたれんが造りの建物を再利用した弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市)で、開館5周年展「ニュー・ユートピア」が開かれている。20組のアーティストの作品と資料をあわせた109点を展示。美術館の軌跡を紹介しつつ、地域とのつながりを広げる試みもある。

 美術館は酒造工場などに使われた建物を改修し、2020年6月に開館した。工事の過程と開館準備の様子を記録した藤井光さんによる映像作品「建築 2020年」が会場入り口に掲げられている。

 開館後に収集した収蔵品は180を超える。そのひとつ大巻伸嗣さんの版画作品「Abyss – Jomon」(2023)は、世界各地に残る古代文明の器に着想を得たシリーズの1点。青森県内の三内丸山遺跡から出土した土器を参照して制作した。

 会場には、弘前市出身の奈良美智さんが高校生のときに開店準備にたずさわったロック喫茶「JAIL HOUSE 33 1/3」が再現展示されている。改修前の倉庫では2000年代に3度、奈良さんの展覧会が市民主体の運営で開かれた。写真家の永野雅子さんと細川葉子さんが撮影した記録写真も展示され、3度の展覧会の盛り上がりを伝えてくれる。その成功が美術館誕生につながった。

 津軽半島で幼少期を過ごした工藤麻紀子さんの「冬が恋しい/春の山をあみこむ」(2023)は、山と一体化するような人物の姿が描かれている。刺繡(ししゅう)で構成された川内理香子さんの新作「CACTUS」(2025)は、鮮やかな色調でひときわ目をひく。

 「語り」の芸術を実践している佐藤朋子さんの「ひろさき縦覧場(じゅうらんじょう)」(2024)は、作家が旧陸軍第8師団の痕跡や、岩木山にまつわる伝説などをリサーチしてつくった。窓を「周りを見渡せる高いところ」という縦覧場に見立てた。窓越しに広がる風景を眺めながら、モニターから流れる「語り」に耳を傾ければ、想像の世界に没入できるかもしれない。

 11月16日まで。観覧料は一般1500円、大学・専門学校生1千円、高校生以下は無料。

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