咲く花が美しいのは、分子や遺伝子といった不可視のレベルに、複雑で精密なシステム、自然の摂理があるからだろう。知的な作風と硬派の批評活動で評価される造形作家・岡崎乾二郎(69)の大規模個展に、そんなことを考えた。

造形作家の岡崎乾二郎さん

 展覧会は展示面積の大きい東京都現代美術館の1~3階を使い、まず1階で2020年までの主要な表現を紹介する。これだけでも大回顧展。その多彩な表現の中でも魅力的なのが、透明感のあるアクリル絵の具による絵画だろう。

岡﨑乾二郎展から。2002年の絵画の展示

 軽やかな色彩とタッチによる抽象表現は浮遊感があり、奔放な現代ダンスを思わせる。何度見てもあきない美と視覚の快楽。よく見ると、同じ形のタッチが1枚の中に、あるいは隣の絵に現れるなど複雑な構造がある。しかしあえては顕示しないのだろう。

 洋服の型紙から抽出した形を…

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