親が亡くなったり、障害で働けなかったりする子どもを支援する「あしなが学生募金」の街頭活動が19日、栃木県ではJR宇都宮駅で始まる。高校奨学金は資金が足りず、近年は申請しても採用されない人の割合が増えている。奨学生らは後輩を助けたいと支援を呼びかける。

 あしなが育英会によると、県内の高校奨学金は申請者全員が採用された2021年度をピークに、22年度78・6%、23年度40・0%、24年度37・8%と採用率が下がっている。以前の給付・貸与の組み合わせ型から23年度に全額給付型になったり、物価高やコロナ禍の影響があったりして申請者が急増したためだ。

 こうした状況を変え、一人でも多くの高校生を助けようと街頭に立つ一人が、小山高専4年の鈴木福さん(18)=栃木市=だ。父親が神経難病のパーキンソン病で十分に働けず、1年時から奨学金を得てきた。3人きょうだいで、母親1人で教育費を賄うのは厳しい。大学生の姉(20)、高校生の妹(15)も高校1年時から奨学生となっている。

 鈴木さん一家は、姉が大学で一人暮らしを始めるまで、祖父母も入れて7人家族。母親が大黒柱として家庭を支えてきた。鈴木さんは「仕事や家事で忙しい母の背中をずっと見てきた」と振り返る。母親や家計のことを考えて、アルバイトができなかった中学生のころは、友だちと遊ぶ時もできるだけ出費を抑えるようにしてきた。

 鈴木さんは高専を卒業したら、大学3年生に編入学する希望を持つ。小さいころ家族で出かけた沖縄の美しい海に魅せられ、海洋プラスチックごみなど海洋問題に関心がある。妹に勉強を教え、教員にもあこがれるようになった。奨学金があることで「大学に進む可能性を持てることが一番の助けになっている」と言う。

 昨年夏、奨学生の集いに参加し、自分よりも厳しい環境にいる高校生がいることを知った。大学生がボランティアで、集いの準備や街頭活動など高校生のために頑張っていることを目の当たりにした。「大学生のおかげで、自分はある程度の生活を送れている。自分も奨学生の一助になりたい。やるしかないと感じた」

 今春、あしなが学生募金の事務局員になった。姉が局員だった影響もある。ただ、局員は県内に自身を含めて2人しかいない。活動を引き継ぐためにも、局員を募りたいと考えている。鈴木さんは「お金を集めるためにも、広報活動をして、あしながの認知度を高められたら」と言う。

 街頭活動は19、20、26、27日にJR宇都宮駅で。いずれも正午~午後6時。(由利英明)

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