100円ショップで道具がそろい、指南動画もよりどりみどり。始めるハードルがぐっと低くなった「編み物」がブームと言われています。入りやすいが奥深い「編み物」について、奈良女子大学教授の山崎明子さんに聞きました。
――編み物はいつごろ日本に入ってきたのでしょう。
「刺繡(ししゅう)、造花や人形作りなど、糸や布を用いて、家庭内で行われる趣味的な手仕事である『手芸』の多くは、明治期に西洋から来た女性宣教師らによって伝えられました。それが女子の中等教育に採り入れられ、女学校を媒介に、中流家庭に広がりました。編み物もその一つです。期待された教育効果は『おとなしくさせる・器用になる』。一種の身体矯正だったともいえます」
――女の子をおとなしくさせる……イヤな目的ですね。
「手芸は、女性が主体で、たとえ技術がどんなに高くても、家庭婦人の手すさびで価値が低いとみなされてきました。そこが、男性中心の職人の技を尊ぶ『工芸』と違うところです。手芸にはジェンダーの枠が強固にはめられてきました」
伸び伸び、「男らしさ」からの逸脱
――いまの「編み物ブーム」は、男性のオリンピック選手や韓国のスターらがきっかけの一つともいわれていますが。
「『編み物男子』をもてはや…