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練習前に座禅を組む選手たち。集中力などがアップするそう=2025年5月9日午後3時38分、名古屋市東区大幸南2丁目、平井茂雄撮影
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 今春の選抜大会に出場した至学館(愛知)。春夏合わせて3度目の甲子園出場に沸いた一方で、女子野球部も強豪だと聞き、裾野が広がっている女子野球の現状を知りたいと思いました。

 至学館は約1700人の生徒が通うマンモス校です。鈴木雄太監督(38)は10年前に男子野球部のコーチから女子野球部の監督になりました。昔は入部時に未経験者が多くいましたが、今は「入ってきた時点でキャッチボールができる、ノックも受けられる、打撃も外野まで飛ぶ、という子が多い」と、女子野球の変化を感じると話します。

 その話の通り、女子野球の競技人口は右肩上がりで昨年度は3千人を超えました。全国高校女子硬式野球連盟の加盟校も同様に65に。2021年からは、全国選手権の決勝が阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開かれるようになり、女子も「甲子園」が聖地となりました。

 至学館大学の前身の中京女子大学に女子野球部が創設されたのが05年。当時は男子のリーグに交ざって戦っていたそうです。12年に高校にも創部されると、17年にユース大会で準優勝。18年と19年には選抜大会で3位に入りました。

 兄の影響で小学校1年から野球を始めた青山彩良(さら)主将(3年)も「甲子園を目指して頑張っている」と目標を語ります。

 高校と大学に女子野球部がある学校は珍しく、普段は大学で一緒に練習しているそうです。「大学生を意識しながら練習できるのは良い環境」と鈴木監督。

 ただ、大学でも部活で野球を続ける選手は少ないそうです。その一因は環境にありました。

 全日本大学女子硬式野球連盟の加盟校はわずか16。野球を続けたくても、進学先が限られてしまいます。

 青山主将もそんな悩みを打ち明けてくれました。第一志望は、至学館大とは別の大学で、そこには女子野球部がないそうです。今は「野球はクラブチームで続けたい」と話します。

 そこに女子野球の課題を感じました。男子は、進学先の多くに当たり前のように野球部があります。でも、女子は高校の先に続ける環境が整っているとは言いがたい状況です。

 青山主将に「第一志望の学校に女子野球部があったら?」と聞くと、「入ります」と即答してくれました。かつては女子プロ選手を目指していた青山主将が、先の野球キャリアを断念せざるを得ないことを残念に感じました。

 硬式野球をやりたい女子が増え、女子野球は成長の過渡期です。より一層の盛り上がりをつくるためにも、高校野球を終えた先の選択肢が増えてほしいと思いました。

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