記者コラム「多事奏論」 編集委員・岡崎明子
「暑気払い」と称して、学生時代の友人と女子会をしたときのことだ。たわいのない話が続く中で、思わず息をのむ発言があった。
「そういえば最近、ママ友が突然倒れて、車いす生活になったの」
その女性はフルタイムで働く50代。夫と2人の子どもがいるという。
「最近疲れが取れないよね」。そんなやりとりが目の前で交わされる。私はと言えば、言葉に詰まり黙り込んでしまった。激務とワンオペ育児が重なり倒れて入院した、ストレスからパニック障害になったなど、働く女性が過労で体調を崩したという話を聞くのは、これが初めてではなかったからだ。
過労死をふくむ女性の労災は見過ごされている。そう訴えるのは、大分大学教授の石井まことさんだ。
石井さんによると、1973年から半世紀近く、労災に関する統計で男女別人数は公表されてこなかったという。この間、男女雇用機会均等法が施行され、女性に男性並みの長時間労働が求められるようになったにもかかわらずだ。
かつて労災と言えば、建設業…