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女性の過労死について語る大分大教授の石井まことさん=本人提供

 「過労死等防止対策推進法(過労死防止法)」の施行から10年が過ぎたが、現在も3日に1人は過労で亡くなっている。うつ病など精神障害による労災が増え、女性の認定者が急増している。こうした状況を前に、大分大経済学部教授の石井まことさんは「女性の過労死や過労自殺を含む労災は見落とされている」と警鐘を鳴らす。どういうことか。石井さんに聞いた。

 ――厚生労働省は、過剰な業務負担や強い心理的負担により亡くなった人だけでなく、脳や心臓の病気、精神障害などの労災を発症した人も含めて「過労死等」と定義しています。

 厚労省が2024年度に過労死や過労自殺(未遂含む)として認定した人は計159人に上り、うち女性は11人です。ただ、本当に女性がこれしかいないのかは疑問です。

 この10年間で急激に増えているのは、過労自殺につながる精神障害による労災です。昨年度は男性554人、女性503人が認められました。実はこうした男女別の傾向がわかるようになったのは、最近のことです。

 ――どういうことでしょう。

 戦後から高度経済成長期までは女性の労災統計も公表されていたのですが、1973年からの約半世紀、性別の統計は公表されてきませんでした。2014年度に過労死防止法が成立したこともあり、「過労死等」については性別統計が公表されるようになりました。

「過労死=男性」の思い込み

 かつて労災といえば、建設業…

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