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明豊―県岐阜商 二回表、力投する県岐阜商の渡辺大=内海日和撮影
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 (17日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 県岐阜商3―1明豊)

 2点リードで迎えた六回、県岐阜商は1死満塁のピンチを迎え、マウンドに選手たちが集まった。

 小鎗稜也捕手(3年)に「点を取られてもいいから全力を出し切れ」と発破をかけられた渡辺大雅投手(2年)は「気持ちをリセットして投げよう」と決めた。次打者に投じた渾身(こんしん)のスライダーを相手は打ち損じ、打球は力なく空に上がって遊撃手のグラブに収まった。

 県岐阜商はこの試合、1回戦の日大山形戦と2回戦の東海大熊本星翔戦でいずれも完投したエース柴田蒼亮投手(2年)の疲れを考慮して温存。先発・豊吉勝斗投手(2年)の後を受け、二回途中で渡辺投手が登板した。

 心に期すものがあった。「悔しい思いをして、周囲にも迷惑をかけてしまって」

 春の県大会ではリリーフで好投。期待されていたが、5月にけがをしてしまい、7月の岐阜大会ではベンチから外れた。チームが甲子園出場を決めた後で、最後の背番号「20」をもらった。

 「名前を呼ばれた時はびっくりでした。でも気持ちを切り替え、代わりに外れた選手の分まで頑張ろうと思いました」

 満を持して上がった聖地のマウンドだが、毎回走者を背負う苦しい投球が続く。マウンド度胸と制球が持ち味だが、久々の公式戦が甲子園。2万人を超す観客が見つめている。「緊張はしなかったんですが、周りが見えていなかった」

 だが、ピンチの度に仲間がもり立てる。併殺を二つ奪う堅守で投球を楽にしてくれた。4回を無失点で切り抜け、柴田投手に後を託した。藤井潤作監督は「緩急を使ってよく投げてくれた。本当に助かった」とたたえた。

 日本三大盆踊りの一つ「郡上おどり」で知られる岐阜県郡上市の出身。下宿生活を送りながら、「郡上に恩返ししたい」と口にする。好投で地元を沸かせたはずだが、満足はしていない。

 「ゼロに抑えたのは良かったですが、点数で言ったら40点。投球フォームがいつもと全然違い、気持ち的にも弱い部分があった。次は修正して強い気持ちで投げたい」と強敵・横浜戦を見据えた。

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