菊池病とは

 世界陸上に出場する女子100メートル障害の福部真子さん(29)=日本建設工業=は、菊池病と向き合いながら競技を続けている。

 菊池病は組織球性壊死(えし)性リンパ節炎とも呼ばれる。1972年に報告した日本人医師の名前から、菊池病という名称で定着している。

 患者は10~20代の若年者に多く、アジア人に多くみられるという。女性に多いとも言われるが、男女比はほぼ同じという報告もあるという。主な症状は、発熱と、首のリンパ節の痛みを伴う腫れで、腫れによるのどの痛みや関節痛、皮膚の赤い発疹があらわれる人もいる。1~4カ月で自然に軽快することが多い。

 独協医科大学病院(栃木県壬生町)総合診療科の勝倉真一医師は「月に数例は、菊池病を疑われる患者を診察する。決して珍しい病気ではない」と説明する。

 何らかのウイルス感染をきっかけに、体内の免疫のはたらきに異常が生じることで起きる、との見方もあるという。だが、仮説の段階で、原因は不明だ。

 症状を踏まえると、結核性リンパ節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、悪性リンパ腫などの可能性もある。検査などで、これらの可能性を否定したうえで、診断を確定させるには、首のリンパ節の組織の一部を採って調べる「生検」をする必要がある。

 自然軽快が期待できることもあり、患者の体への負担を考慮して、経過を観察したうえで、2~4週間以上、症状が改善しなかった場合に生検を検討するという。治療は、対症療法として解熱鎮痛剤を使い、改善しない場合にはステロイド薬も選択肢になる。

 「菊池病は『風邪?』というところから始まることが多い。1週間ぐらい過ぎても熱が下がらなかったり、首のリンパ節を触るとゴロゴロしたり、強いのどの痛みを感じたりすれば、内科や総合診療科などを受診してほしい」

 関連性ははっきりしないが、菊池病の診断から数年以上後に、SLEなどの自己免疫疾患と診断されるケースも、まれにあるという。SLEは女性に多い。口内炎や関節痛、皮膚の赤い発疹、脱毛などの症状があり、治療が必要になる。「菊池病の診断後に、こうした症状があった場合は、早めに受診してほしい」と勝倉さんは話す。

共有
Exit mobile version