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横浜清陵―広島商 三回表横浜清陵1死二塁、山本は右前安打を放つ=白井伸洋撮影

(第97回選抜高校野球大会)

 印象に残るフルスイングがある。大会4日目の1回戦、横浜清陵と広島商の試合前にあった始球式でのことだ。

 奈良市立東登美ケ丘小4年の岡田賢佑(けんすけ)さんが投げたボールは、少し左にそれてワンバウンドした。笑顔で打席に入った横浜清陵の1番山本康太は、その球を豪快に空振りした。マウンドの岡田さんにも「ブン」と聞こえそうなほどに。

 岡田さんは「ちょっとうまくいかなかったけど、振ってくれてめっちゃうれしかった」。所属する野球チームは、試合に出られるかギリギリの人数だという。でも、始球式の後に登校すると、多くの友だちが出迎えてくれ、「ナイスピッチ」と言ってくれた。

 この試合に勝った広島商の結果を気にして、以前よりも高校野球を熱心に見るようになった。「高校生になってあの舞台に戻りたい」という目標もできた。

 18日の開会式の選手宣誓で、市和歌山の川辺謙信主将は「(高校野球を)未来の高校球児へとつないでいく責任があります」と言った。山本は「自分も何かしてあげたかった」。未来へつながる空振りだった。

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