米テレビ界の「アカデミー賞」と呼ばれる第76回エミー賞で、戦国末期の日本を舞台にしたドラマ「SHOGUN 将軍」が作品賞など18部門を制した。真田広之さんが主人公の吉井虎永を演じ、プロデュースも務めた本作の魅力を作家・編集者の中川右介さんが読み解いた。
完全フィクション、でも「リアル日本」
ジェームズ・クラベルの小説「将軍」は1980年にもアメリカでテレビドラマ化され、徳川家康をモデルにした武将を、当時60歳の三船敏郎が演じた。今回の「SHOGUN 将軍」では同じ役を、63歳の真田広之が演じている。若きアクションスターだった真田も、関ケ原の戦いの家康を演じる年齢になり、アクションを封印し、威厳と知力で戦う役を見事に演じている。
「SHOGUN 将軍」は、スケールの大きな映像が売り物で、遠景と戦闘シーンなどにはVFXがふんだんに使われているが、基本は謀略と裏切りの人間ドラマだ。それゆえ、数秒でも気をそらしていると、話が分からなくなる(幸いにも配信なので、戻して確認できる)。裏切る者は何度も裏切り、誰が敵で誰が味方なのか、誰が何の意図で動いているのか、登場人物同士が分からないだけでなく、見ている視聴者も分からない。この二転三転するストーリーが、多くの視聴者を得た最大の理由だろう。
物語は、豊臣秀吉亡き後の…