カードを使ったワークショップを体験する生徒たち=2025年1月17日午前、長野市、遠藤和希撮影

 子どもの自殺者数が高止まりする中、悩みを抱える友人への寄り添い方を学ぶ取り組みが、長野日大高校(長野市)で開かれた。

 この取り組みは、こども家庭庁が1月中旬に全国で初めて実施した「傾聴や寄り添いの重要性を知るワークショップ」。34人の生徒が4、5人ずつのグループをつくり、「悩み役」「サポーター役」「観察役」に分かれてカードゲーム方式で進められた。

 まず悩み役が「テストの成績が落ちてしまった」「SNSに悩んでいる」など架空の悩みが書かれたカードを引き、サポーター役に伝えた。その後、悩み役とサポーター役は、その状況を改善するのに必要だと思う「サポートカード」を相手に見せずに3枚選んだ。カードには「悩んでいる原因や気持ちを聞いてもらう」「仲の良い先生に代わりに伝えてもらう」などといった寄り添い方が書かれている。互いに選んだカードが違った場合、双方でカードを選んだ理由を話し合った。

 悩み役を務めた小山紗枝里(さえり)さん(16)は、「温かい言葉が欲しい」と感じたが、サポーター役が選んだのは「先生に伝える」だった。小山さんは「人によって考えが違う。相手の気持ちに寄り添うことが必要だと気づいた」と話した。観察役はカードを選ぶ過程を見て、気づいたことをメモにまとめる。カードに正解はなく、必要な支援を考えて選ぶ過程が大事という。

 厚労省の2024年版の「自殺対策白書」によると、小学生から高校生の自殺者数は10年の287人から22年には514人に増えた。24年の自殺者数は暫定値で527人と過去最多を更新し、コロナ禍以降高止まりが続いている。

 こうした状況から長野県は19年、学校側の支援要請に対応できる精神科医や臨床心理士などによる「子どもの自殺危機対応チーム」を発足させた。自殺未遂歴や自傷行為の経験がある子どもに対して、関係機関同士が連携して支援しており、全国の先進事例となっているという。

 同庁の山下護・自殺対策室長は「悩んでいる人は日頃から交流がある相手ではないと相談しにくい。今回の取り組みを様々な自治体や子どもの『第三の居場所』などに広げていきたい」と話した。

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