専門家らによる検討会の最終会合。正式名称は「緊急下の妊婦から生まれた子どもの出自を知る権利の保障等に関する検討会」という=2025年2月2日、熊本市西区島崎6丁目、伊藤隆太郎撮影

 熊本市の慈恵病院では、親が育てられない子を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」や、病院の担当者のみに身元を明かす「内密出産」に取り組む。子どもたちが出生に関わる情報を知りたいと願ったとき、誰がどう保障するのか。専門家らによる検討会の報告書が、今月末にも公表される予定だ。

 こうのとりのゆりかごは2007年、開設。23年度までに179人が預け入れられた。内密出産は21年12月~25年2月末に43人が生まれている。

 数年前から、出生の経緯を知りたいと病院を訪れる子どもたちも現れ始めた。

 だが、日本には出自を知る権利を保障する法律はない。さらに、ゆりかごも内密出産も病院独自の取り組みで、法的根拠はない。

 22年、国は内密出産のガイドラインを公表。だが、保管すべき「出自情報」の項目や、子どもが情報にアクセスできる年齢なども含め、具体的な手順は明記されていない。

 女性が求める「匿名性」と子どもの「知る権利」をどう両立させるか――。熊本市と病院は23年5月、専門家らによる検討会を共同設置し、今年2月まで議論を重ねてきた。

 内密出産や匿名出産を法制化するドイツやフランスなどの事例を参考に、「出自情報とは何か」「誰がどこで管理・保管するか」「どのように子どもに情報を提供するか」などの具体的な問題点について検討。出自情報を子どもに伝える際のケアの重要さや、保護されるべき母親側の利益なども議論され、「母親の身元の特定につながる情報」と「特定までは至らない情報」とを分けて扱うことなどで、意見が一致したという。

 報告書には、開示を請求でき…

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