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「長野の子ども白書」の創刊号(右)と最終号を手にする小林啓子さん=長野市

 2012年に創刊した「長野の子ども白書」が、15日発行の25年版で休刊することになった。当事者の声を大切に、いまの子どもたちが置かれた状況を伝えてきた。紙媒体が読まれないなか、今後はネット配信などを検討するという。

 同白書は、1964年から発行されている「子ども白書」(日本子どもを守る会)の地方版的な位置づけでスタートし、最終号で14冊目。子どもの貧困や不登校、いじめ、生きづらさなど様々なテーマを取り上げ、子どもや保護者、教員、識者らが執筆してきた。

 「今の自分を、幸せな子ども期を生きてほしいと願い、送り出してきました」。元小中学校教員で、長野の子ども白書編集委員会事務局代表の小林啓子さん(76)はそう話す。

 自殺しようとした高校生や自死した高校生の母親の手記を掲載するなど、タブー視されがちなテーマにも切り込んだ。「ネガティブなものも含め、子どもら当事者の声をそのまま載せていくこと」(小林さん)で、より問題の本質に近づけると考えたからだ。

 小中学生向けに、自尊感情などについて聴く独自のアンケートを実施したことも。白書は行政や教育関係者からも注目されるようになり、創刊時の執筆者約50人は刊行10年目に倍増されるなど認知されていった。

 一方、活字離れもあり、これまで800~1千部を用意し注文販売などしていたが、購読者数は減少。小林さんを含め6人の事務局が手弁当で運営してきたが、印刷代の高騰など経費増もあり、出版の継続は難しいと判断した。

 25年版の執筆者は延べ63人(団体含む)。まず、子どもの貧困や子どもに戦争の歴史を伝える大切さなど、これまでに取り上げてきた象徴的なテーマに沿った投稿を紹介。加えて、「子どもの学校」「包括的性教育をはじめよう」「子どものための福祉と子どもの権利」「子どもの遊び・文化・余暇・休息・自然」の四つの特集を組んだ。

 小林さんは「子どもを権利の主体として考えないと、子どもの幸せ期はないということを改めて思う」と話す。

 今回の最終号では、執筆者の多くが「学校」への関心を示したことから、事務局では公立の小中高に無償で提供するとしている。

 1冊2500円。「長野の子ども白書」で検索し、ネットで注文できる。住所、氏名などを記入のうえファクス(026・244・7207)でも可。

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