「日本版DBS」制度の準備が、来年12月のスタートに向けて進んでいる。子どもと接する事業者に性犯罪歴の確認を求め、犯歴のある人の就労を制限するのが目的だ。だが、臨床心理学や犯罪心理学の研究者で、「痴漢外来」などの著書がある原田隆之・筑波大学教授は、加害者を排除するだけでは子どもの性被害防止にはつながらない、と話す。いま何が求められているのか。
――制度をどのように評価していますか。
性犯罪において再犯を防ぐには、犯罪の引き金となるものが何か、それにどう対処するか、が重要です。
痴漢を例に挙げます。満員電車が引き金になるのであれば、満員電車に乗らないことが再発予防の基本になります。
小児性犯罪では、子どもとかかわることは引き金を引いてしまいます。そこから遠ざけるという意味で一定の効果はあるでしょう。
ただし、抜け道はいくつもあります。子どもと接する職場のすべてに義務づけられてはいませんし、保育園や学校から一歩外に出れば、社会のさまざまな場所で小児性犯罪のリスクのある人と子どもが接する可能性はある。すべてに網をかけることは不可能です。
また、確かに子どもにかかわる仕事には就かせないほうがよいですが、社会から排除させる方向に過度に進むと、更生や社会復帰ができずに孤立し、逆に再犯のリスクを高めてしまう恐れがあります。
どんな治療があるのか?治療効果が乏しい場合の対処は
――では、何が必要でしょう…