Smiley face
写真・図版
古谷経衡さん

 「この記事を読んで、筆者の毒親体験が改めて、まざまざと眼前に映像となって思い起こされる」

 3月9日配信の記事「『ジャンプ読むな!』トイレに響いた怒声 毒親だった母の最期の半年」に、作家・評論家の古谷経衡さんは、こうコメントした。

 記事は、中学受験を機に母親から厳しい教育虐待を受けたという東京都内の会社員男性の体験を描いた。夜中まで勉強を命じられ、食事とトイレ以外で部屋から出ることも許されず、公立中に進んだ後も「軟禁状態」が続いたという。

 古谷さんはコメントで、自身も学業不振を理由に両親から「苛烈な虐待を受けた」ことを明かした。父は地方公務員、母は専業主婦。虐待が始まったのは、この男性と同じように中学生の頃で、「勉強をしないのならお前にかける水道光熱費がムダ」と、シャワーの最中にガスを切って冷水にするなど「壮絶なものだった」という。

 高校生になり、古谷さんは重度のパニック障害を発症したが、「経済を握っているのは両親なので面従腹背を貫いた。私が正々堂々と毒親と戦う覚悟ができたのは、齢30代を過ぎてからである」とつづった。

 こうした経験を著書「毒親と絶縁する」にまとめている古谷さんは、毒親の世界観について、子どもを「別個の人格」として認識できず「自己の所有物」としてしか見ていないと分析した。

 そして、「このような毒親を外部から見ると、いかにも子煩悩に思える」とした。古谷さん自身も塾に通うなど必要十分な教育環境は与えられたが、それは「筆者のためではなく、子弟を所有物として認識したが故の『投資』に過ぎなかった」とみる。「自分の宝物を大事にするのは当然だが、一方で『大切な所有物なのだから意のままにして当然だ』という歪んだ感情が、毒親にはある」

 そのうえで、「このような毒親と和解することや理解しあえることは基本的には不可能である」と結論づけ、次のようにコメントを結んだ。

 「毒親は、社会の中で『害悪』として顕在化することなく、いまこの瞬間でも津々浦々に潜伏して、平然と世間では『善い人』の評価を受けながら、子弟を苦しめているのではないか」

 この記事や、古谷さんのコメント全文はこちらから(https://t.asahi.com/wosx)。同じ記事には俳人で大阪公立大学教授の杉田菜穂さんもコメントしています。あわせてご覧ください。

     ◇

 コメントプラス(https://www.asahi.com/comment/about/)は、専門家らが記事にコメントを投稿し、新たな視点や考えるヒントを提供する朝日新聞のデジタル版の機能です。2月から古谷さんら16人が新しいコメンテーターとして加わり、総勢約100人に。多彩な顔ぶれのコメンテーターが、日々配信されるニュースの世界を広げます。

共有